フェスティバルFUKUSHIMA! 2021「越境する意志/The Will to Cross Borders」

まん延防止等重点措置により、会期を変更いたします。

会期:2021年8月15日(日)9月4日(土)〜10月17日(日)12:00〜18:0017:00 ※ 土日祝日のみオープン 会場:福島市 四季の里 / 憩いの館(福島市荒井字上鷺西 1-1) 観覧料:一般 1000 円、小学生以下無料

◎10月16日、17日にクロージングイベントフェスティバルFUKUSHIMA ! 2021を開催します!
オーケストラFUKUSHIMA!2021 参加募集!

開催にあたって

コロナ禍の2021年、わたしたちの活動の原点とも言える福島市郊外の公園「四季の里」を再び会場にして、2ヶ月間にわたるフェスティバルFUKUSHIMA!2021を開催すべく、準備をしてきました。コロナの猛威は未だ衰えず、今年も盆踊りの祭りとしては開催できませんが、展覧会を中心としたフェスティバルとして、会期のクロージングには四季の里全体に大風呂敷を広げ、ライブやワークショップも開催します。

10年前、原発事故の影響を受けた福島でのフェスティバル開催を準備する中で、わたしたちはたくさんの議論を重ね、あのような状況下で新しい祭りを作っていきました。当初は福島での開催に強い非難を受けることもありましたが、継続していくにつれ次第にそうした声は少なくなり、2013年から始まった大風呂敷を広げての生演奏の盆踊りは、各地の芸術祭にも招致されるようになりました。くしくもコロナ禍で、わたしたちの祭りを開催できるのか、できるとしたらどのような祭りなのか、再びゼロから思考し議論することになるとは思っていませんでしたが、10年ぶりに会場が原点に戻るだけではなく、難しい状況をどう打開し実現させていくか、それを考え作り上げるプロセスも当時と通じるものがあると感じます。

「ネガティブに世界に知られたFUKUSHIMAを文化でポジティブに転換する」という目標を掲げたこのプロジェクトにとって、祭り当日の熱量を最大限にすることは当然重要なのですが、同時に、そこに至るまでのプロセスをひとつひとつ丁寧に積み上げる作業が、一番必要なことではないか。そんな信念のようなものが、なんの後ろ盾もないわたしたちのようなインディペンデントな活動を支える原動力になっていると言えるのかもしれません。

今回の展覧会のタイトルとなった「越境する意志/The Will to Cross Borders」、これは2012年のフェスティバルのテーマ「Flags Across Borders」の次章とも言えるものですが、震災から10年、活動開始から10回目という節目を越えて、これからもプロジェクトを継続していく、意志を示すものでもあります。

そして、踊りが封じられた2回目の夏に、もうひとつ大きな発表を準備していますので、会場に来ることが難しい方も、そちらもぜひご注目ください。

──────山岸清之進

アーティスト:岩根愛、ちばふみ枝、中崎透、中村葵、藤井光
キュレーター:中﨑透
会場構成:アサノコウタ

岩根愛 Ai Iwane
東京都出身。1991年単身渡米、ペトロリアハイスクールに留学し、自給自足の暮らしの中で学ぶ。帰国後、1996年より写真家として活動を始める。2018年、『KIPUKA』(青幻舎)を上梓、第44回木村伊兵衛写真賞、第44回伊奈信男賞受賞。ドキュメンタリー映画『盆唄』(中江裕司監督作品、2018年テレコムスタッフ)を企画、アソシエイト・プロデューサーを務める。2021年、第37回写真の町東川賞新作家賞受賞。最新作品集に『A NEW RIVER』(bookshop M)、著作に『キプカへの旅』(太田出版)『ハワイ島のボンダンス』(福音館書店)。(チラシ表面写真:岩根愛/No Man Ever Steps in the Same River Twice/2020年)

No Man Ever Steps in the Same River Twice/2020年

ちばふみ枝 Fumie Chiba
1981年宮城県石巻市生まれ。2006年武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻彫刻コース修了後、都内を中心に作品を発表。2011年東日本大震災を機にUターン。現在は「石巻のキワマリ荘」内に自身が企画運営するアートスペース「mado-beya」を2020年1月にオープンし、拠点として活動している。レリーフを自立させる手法で彫刻作品を制作する傍ら、津波で被災した実家の手入れを2019年より再開し、その記録写真を『海とカモシカ』シリーズとして展開している。

くすんだベール/2021年

中崎透 Tohru Nakazaki
1976年茨城生まれ。美術家。武蔵野美術大学大学院造形研究科博士後期課程満期単位取得退学。現在、茨城県水戸市を拠点に活動。看板をモチーフとした作品をはじめ、パフォーマンス、映像、インスタレーションなど、形式を特定せず制作を展開している。展覧会多数。2006年末より「Nadegata Instant Party」を結成し、ユニットとしても活動。2007年末より「遊戯室(中崎透+遠藤水城)」を設立し、運営に携わる。2011年よりプロジェクトFUKUSHIMA!に参加、主に美術部門のディレクションを担当。

Red line in the forest/2021年 photo:Koji Nishikawa

中村葵 Aoi Nakamura
1994年福島県生まれ。2018年武蔵野美術大学大学院修士課程造形研究科油絵コース修了。主な展覧会に、2018年「清山飯坂温泉芸術祭」旅館清山(福島)、2019年「群馬青年ビエンナーレ2019」群馬県立近代美術館 (群馬)、2020年「余白/ Marginalia」SNOW Contemporary(東京)、2021年「沈黙のカテゴリー」クリエイティブセンター大阪(大阪)など。

Reloaded Body-head-/2019年(協力:アンドロイド開発、共同研究=石黒浩、小川浩平〈アンドロイド制作〉、池上高志、土井樹〈アンドロイドプログラミング〉)

藤井光 Hikaru Fujii
1976年東京都生まれ。パリ第8大学美学・芸術第三博士課程DEA修了。芸術と社会の関係に着目し、綿密なリサーチやフィールドワークを通して同時代の社会課題に応答する映像インスタレーションを制作。ワークショップを通して歴史的事象を再演(リエナクトメント)する手法をしばしば用いて、過去のできごとと現代を結ぶ実験を行う。(チラシ表面写真:藤井光/解剖学教室/2020年)

解剖学教室/2020年

ちょうど10年前の2011年8月15日、福島市にある四季の里の芝生の上には、6000平米にも及ぶ色とりどりの大風呂敷が広げられ、「フェスティバル FUKUSHIMA!」が開催された。以後毎年8月に、2013年以降は盆踊りを中心とした福島市内でのフェスティバルを開催してきたが、昨年2020年はコロナ状況下において中止となった。「フェスティバルFUKUSHIMA!2021」と題して、今年は四季の里を会場に、夏からの展覧会や、秋に大風呂敷を広 げたイベントやライブ、ワークショップといった一連の企画をフェスティバルとして開催することを予定しているが、こんなご時世だけに予定は未定になるかもしれないが、とりあえずはジタバタしてみる。
この5人の作家の展覧会「The Will to Cross Borders/越境する意志」では、東日本大震災から10年という時間を一つのテーマとして作家に声がけすることから始めているが、各作家の作品のすべてが必ずしも震災や震災後の福島を主題にしてるわけではない。けれども以前から当然のことようにあったもの/なくなったもの、震災を通して可視化されたもの、時間が経ったから動き出したもの、現在のコロナ禍で浮かび上がるもの、個人の小さな出来事や意志が世界と繋がっていること、そんなことを想起させる。時間や様々な分断や違いを踏み越えようとするささやかな一歩の積み重ねの見えるような場所であったらいいし、きっとそういうことからしか世界は変わらないと思っている。県境を跨ぐことすらも憚られるような状況の中で、なんとも皮肉めいたタイトルになってしまったけれども、なんでも軽々と飛び越えてしまうような自由な気持ちはいつでもギュッと握りしめていたい。
中崎透(美術家 / 本展キュレーター)

「The Will to Cross Borders/越境する意志」チラシPDF ダウンロード
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